大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

水戸地方裁判所 昭和45年(わ)104号 判決

本店所在地

茨木県水戸市大工町二丁目六番三三号

東芝観光開発株式会社

右代表者代表取締役

秋田実こと 呉鋿沫

本籍

韓国全藍南道渾陽郡渾陽邑川返里一〇二番地

住居

東京都葛飾区立石八丁目四〇番一一号

会社社長

秋田実こと

呉鋿沫

一九一七年三月二一日生

本籍

韓国慶尚南道山清郡今西面芳谷里八〇一第地

住居

茨木県水戸市大町三丁目二番五六号

会社社長

島崎清三こと

李学渕

一九二五年三月一日生

右の者らに対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は、検察官山田一夫出席のうえ審理を遂げ次のとおり決する。

主文

被告人東芝観光開発株式会社を罰金二〇〇万円に、

被告人呉鋿沫、同李学渕をそれぞれ懲役六月に各処する。

ただし、被告人呉鋿沫、同李学渕に対しては、この裁判確定の日からいずれも二年間それぞれ刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、全部、被告人東芝観光開発株式会社、同呉鋿沫、同李学渕の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人東芝観光開発株式会社(以下、被告人会社という。)は、昭和四〇年七月一九日に設立登記され、当初は東京都葛飾区本田立石町六四番地に本店を設けたが、同四四年一二月三日肩書本店所在地に移転した資本金四五〇〇万円の非同族会社であり、決算期を毎年一月末日と定めて、土地の開発事業および分譲、賃貸借のほかパチンコおよびボーリング遊技等各種娯楽施設の経営等を営業目的とするもの、被告人秋田実こと呉鋿沫は、同会社設立当初から被告人会社の代表取締約社長または会長として、被告人会社の業務全般を掌理統轄していたもの、被告人島崎清三(商業登記簿上は島崎清二)こと李学渕は、同会社設立当初から同四三年一二月に退社するまでの間、被告人会社の代表取締役副社長または社長の地位にあり、とりわけ設立当初から同四三年一〇月ころまでの間は被告人会社の経理面の責任者としてその経理事務を掌理していたものであるが、被告人呉および同李の両名は、同四一年一月初めころ、共謀のうえ、被告人会社の業務に関し、売上金等の一部を被告人会社の所得から除外して正規の帳簿に記載せず、いわゆる二重帳簿を作成するなどの方法により法人税を免れようと企て、

第一、同四一年二月一日から同四二年一月三一日までの事業年度において、パチンコおよびボーリングの売上金等の一部を被告人会社の正規の帳簿に記載せずに除外し、これを架空名義の簿外預金にするなどして隠したうえ、被告人会社の実際所得金額が二、五六五万六、五七九円であつたのにかかわらず、同四二年三月三〇日所轄の東京都葛飾税務署において、同税務署長に対し、欠損金額三〇八万八、七七八円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正り行為により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額六五五万五〇〇円を逋脱し、

第二、同四二年二月一日から同四三年一月三一日までの事業年度において、前同様の方法で所得の一部を隠したうえ、被告人会社の実際所得金額が六五三万三、四七一円であつたのにかかわらず、同四三年三月三〇日前記葛飾税務署において、同税務署長に対し、所得金額を四八万三、一七四円とし前記の繰越欠損金を控除して所得金額が零である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額一五七万八、五〇〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき、

一、第一回、第八回および第九回公判調書中の被告人会社代表者兼被告人呉、被告人李の各供述記載部分

一、被告人呉の大蔵事務官に対する各質問てん末書および検察官に対する各供述調書

一、被告人李の大蔵事務官に対する各質問てん末書および検察官に対する各供述調書

一、第四回公判調書中の証人藤咲八重、第五回公判調書中の証人黄永玉、第七回公判調書中の証人姜敬 の各供述記載部分

一、証人安田宗一こと安時契、同平山富代こと金滋順、同平山才一こと金才一に対する当裁判所の各尋問調書

一、証人鈴木好江に対する受命裁判官の尋問調書

一、上野紀生、吉成照男、豊出幸三、塩隔隆、松本哲也、細山田政信の検察官に対する各供述調書

一、川又久雄、山岡隆重、羽持久則、豊田幸三、石井、紫大也、栗原武、高江功作成の各答申書

一、上野紀生、内原脩治、布谷裕、小林康人作成の各供述書

一、豊田幸三、姜敬 作成の各「証明書」と題する書面

一、登記官作成の各登記簿謄本

一、秋田実、黄田正雄作成の各「提出書」(各添付書類を含む)と題する書面

一、国税査察官作成の「簿外預金残高および受取利息調査表」と題する書面

一、大蔵事務官作成の「茨木県商工信組本店調査関係書類」および「水戸信用金庫本店調査関係書類」と題する各書面

一、押収してある役員会等開催メモ綴一綴(昭和四五年押第九四号の一一)、経理監査に関するメモ一綴(同押号の一二)

判示第一の事実につき

一、多田尚弘作成の答申書

一、水戸税務署長作成の昭和四一年度法人税確定申告書証明書(確定申告書写添付のもの)

一、国税査察官の昭和四五年三月一六日作成の「修正損益計算書」および「脱税額計算書」

一、国税査察官作成の「売上除外額検討表」、「パチンコ売上除外明細書」、「ボーリング売上除外明細書」、「売上除外と簿外出納帳との照合表」および「簿外出納帳の収支と仮名飯田誠一名義普通預金との照合表」と題する各書面

一、押収してある総勘定元帳一綴(昭和四五年押第九四号の一)、総利益明細書一冊(同押号の三)、ボーリング売上日計簿一綴(同押号の四)、金銭出納帳一冊(同押号の五)、売上日計表二枚(同押号の六の一および二)、金銭出納帳二冊(同押号の七および八)、日計表三綴(同押号の一〇の一ないし三)、試算表および決算報告書(同押号の一三)

判示第二の事実につき、

一、水戸税務署長作成の昭和四二年度法人税確定申告書証明書(確定申告書写添付のもの)

一、国税査察官作成の昭和四五年二月二五日付「修正損益計算書」および同月一二日付「脱税額計算書」

一、国税査察官作成の「売上除外調査表」と題する書面

一、押収してある総勘定元帳一綴(昭和四五年押第九四号の二)、売上ノート一冊(同押号の九)

(法令の適用)

被告人呉、同李の判示第一、第二の各所為は、いずれも法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号、刑法第六〇条に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は同法第四五条前段の併合罪なので、同法第四七条本文、第一〇条によりいずれも犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、同被告人両名を各懲役六月に処し、諸般の情状を考慮し、同法第二五条第一項を適用して同被告人両名に対し、この裁判確定の日からいずれも二年間それぞれその刑の執行を猶予することとし、被告人会社については、被告人呉および同李の犯行がいずれも被告人会社の代表者等としてその業務に関してなされたものであるから、判示第一、第二の事実につき、いずれも法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項を適用し、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、同法第四八条第二項により所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人会社を罰金二〇〇万円に処し、訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条により全部被告人会社、被告人呉および同李に連帯して負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 金子仙太郎 裁判官 佐野精孝 裁判官 武田偉弘)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例